給食の献立で目にすることも多い「松風焼き」。作ったことがある、献立に取り入れたことがあるという栄養士さんも多いのではないでしょうか。

では、「松風焼きの“松風”って何?」と聞かれたら、すぐに答えられますか?

先日、給食の業務中に調理師さんから「今日の松風焼きの“松風”って何?」と聞かれました。そう言われてみると、私はうまく説明することができませんでした。何度も扱ってきた料理なのに、なぜ「松風」という名前なのか。そこまで考えたことがなかったのです。

今回は、そんな給食現場で生まれた小さな「なぜ?」から、松風焼きの名前の由来や、日々の仕事の中にある学びを給食や食育にどう活かせるかをご紹介します。給食だよりや献立紹介、食育のちょっとしたネタを探している栄養士さんのヒントになればうれしいです。

松風焼きとは?

松風焼きは、鶏ひき肉などに調味料を加えた生地を平らにして焼き、表面にごまやけしの実などを散らして仕上げる料理です。「のし鶏」と呼ばれることもあり、おせち料理の一品としても知られています。

給食では、けしの実の代わりにごまを使うなど、提供する対象や施設に合わせて作られることもあります。では、なぜこの料理を「松風焼き」と呼ぶのでしょうか。

「松風」という名前はどこからきた?

松風焼きの名前の由来には、いくつかの説明があります。そのひとつが、古典文芸や能の『松風』に結びつけたものです。

松風焼きは、表面にごまやけしの実などを散らして焼く一方で、裏側には何もつけません。つまり、表はにぎやかだけれど、裏は寂しい。この「裏が寂しい」という料理の特徴と、「松風」という言葉が表す「浦寂しい」情景を重ねた言葉遊びから、その名がついたといわれています。

また、裏側には何もついていないことから、「裏がない」=「隠し事がない」と捉え、おせち料理では「隠し事のない、正直な生き方ができるように」という願いを込めた料理として紹介されることもあります。

普段何気なく食べている料理にも、昔から伝わる文化や言葉が隠れている。そう考えると、いつもの献立も少し違って見えてきます。

「知っている料理」なのに、意外と知らなかった

今回、私が一番ハッとしたのは、「そういうもの」として覚えたことを、そのまま通り過ぎていたことでした。

給食の現場には、毎日たくさんの仕事があります。献立を確認する、発注する、調理する、提供する。日々の業務を進めることに意識が向いていると、慣れているものほど「これはどうしてなんだろう?」「なぜ、この名前なんだろう?」と立ち止まる機会は少なくなります。

松風焼きも、私にとっては「知っている料理」のひとつでした。でも、「“松風”って何?」と聞かれたことで初めて、知っているつもりだったけれど、意外と知らなかったことに気づきました。

ひとつの「なぜ?」が、栄養士の引き出しになる

今回のような小さな疑問も、調べて終わりではありません。知ったことは、給食や食育のいろいろな場面で活かすことができます。

例えば、

  • 給食だよりの豆知識にする
  • 献立紹介に料理名の由来を添える
  • 食育で子どもたちに伝える
  • 食事中の会話のきっかけにする
  • 調理師さんやほかの職員と共有する

などです。

料理そのものについて知るだけでなく、「なぜこの名前なんだろう?」「どんな意味があるんだろう?」という背景まで知っていると、伝えられることがひとつ増えます。特別な教材を用意しなくても、普段の献立そのものが食育の教材になることもあります。

給食や食育では、こんなふうに伝えられます

例えば、松風焼きが献立に登場する日に「今日は松風焼きです」と伝えるだけでなく、「この“松風”って、どんな意味だと思う?」と問いかけてみるのもひとつです。

給食だよりや献立紹介なら、こんなふうに短く紹介することもできます。

松風焼きは、表にごまなどをのせて焼きますが、裏には何もつけません。「表はにぎやか、裏は寂しい」という料理の特徴から「松風」と呼ばれるようになったという説があります。また、「裏がない」ことから、隠し事をせず正直に過ごせるようにという願いを込めたおせち料理としても親しまれています。

すべての由来を詳しく説明する必要はありません。「こんな意味があるんだよ」と少し添えるだけでも、「知らなかった!」「どうしてそんな名前なんだろう?」と、食べものや食文化に興味を持つきっかけになります。

普段の仕事の中に、食育のタネはたくさんある

「学び」というと、本を読む、研修を受ける、新しい資格を取る。そんなことをイメージするかもしれません。もちろん、それも大切です。

でも、普段の仕事の中にも学びのきっかけはたくさんあります。献立を見ながら「なぜ、この料理にはこの名前がついているんだろう?」。食材を見ながら「どうして、この時期によく食べられるんだろう?」。行事食を見ながら「なぜ、この日にこの料理を食べるんだろう?」。

そんな小さな疑問をひとつ拾って、調べてみる。それだけでも、給食だよりや献立紹介、食育、食事中の会話に使える自分の引き出しが少しずつ増えていきます。

「知っているつもり」の中に、新しい発見がある

今回、「松風って何?」と聞かれなければ、私はきっと、そのまま松風焼きを提供していたと思います。でも、一度立ち止まって調べたことで、いつもの献立がひとつの学びに変わりました。

毎日の給食には、「知っているつもり」で通り過ぎている小さな疑問が、まだたくさんあるのかもしれません。全部を調べなくても大丈夫です。気になったことを、ひとつ拾ってみる。

その小さな「なぜ?」が、給食だよりの一文になったり、食育の話題になったり、誰かとの会話につながったりします。いつもの献立を少し違う目で見てみると、そこにも栄養士だからこそ届けられる「食の楽しさ」が隠れているのかもしれません。

参考資料

参考資料
・農林水産省「にっぽん伝統食図鑑 ふり松風」
・さいたま市 食育なび「松風焼き/市立保育園給食レシピ」
・佐倉市「松風焼き」
・静岡赤十字病院 栄養課「お正月に簡単にできる『松風焼き』を作ってみませんか」

※松風焼きの名称の由来については複数の説があるため、本記事ではその一例をご紹介しています。

Hikari Table

森重 さき